ここでは、2016年4月にFacebookのカンファレンス「F8」で発表されて注目を浴びているチャットボットプラットフォームについて説明します。
チャットボットとは?
ボット(chatbot)とは、「ロボット」の略称で、人間がコンピュータを操作して行っていたような処理を自動的に実行するプログラムのことです。
そして、チャットボット(chatbot)は「チャットを行うロボット」のことで、「会話ボット」と呼ばれることもあります。「人工知能」との対比で「人工無脳」(「人工無能」ではない)とも言われます。
「人工知能」はコンピュータに「人間らしい」振る舞いをさせる研究で、1965年頃に始まりました。しかし、その研究・開発の道のりは険しいもので、現在でも多くの研究者、開発者が取り組んでいます。
人工知能の実現にまだ時間がかかることで考えだされたのが「人工無脳」(「チャットボット」)です。
会話は、人間らしい知的な振る舞いの一つで、人工知能で実現するのは難しいものがあります。ここで生まれた新しいアイデアは、コンピュータが一見人間の言うことを理解して応答しているように見せかけよう(シミュレートする)というものです。チャットボットの研究は1966年頃には始まり、進化を遂げてきました。
単純なチャットボットは意外と簡単に開発できます。人間が発する言葉の中からキーワードを拾ってきて、内部のデータベースとマッチングし、そこからテンプレートに従って応答を生成して「もっともらしい」返事を返すというものです。
Googleが開発したチャットボットの会話
一つの例として、Googleが開発した「人生の意味を考える」という チャットボットを挙げておきます。なかなか哲学的な会話をしているように見えます。
Human(人間):what is the purpose of life?(人生の目的って何だろう?)
Machine(機械):to serve the greater good.(より良いものを生み出すためです。)
Human:what is the purpose of living?(何のために生きているのだろう?)
Machine:to live forever.(永遠に生きるためです。)
Human:what is the purpose of existence?(何のために存在しているのだろう?)
Machine:to find out what happens when we get to the planet earth.(私たちが地球という惑星にたどり着いて、何が起きているかを知るためです。)
・
・(中略)
・
Human:what is the purpose of emotions?(感情はなぜあるのだろう?)
Machine:i don’t know.(わかりません。)
しかし、この仕組みを高度に発展させ、複雑なものにすることで、現在の定型的な会話に応用でき、十分実用的な会話が可能になるほどに進歩しました。
例えば、コールセンターで相手のクレーム内容を聞き取ることは、必ずしも人間である必要はないかも知れません。クレームへの回答は人間が行う必要があるでしょうが、聞き取りはコンピューターに任せることで時間とコストを削減できます。
チャットボットプラットフォームとは?
チャットボットがが注目され始めたことを受けて、これまで開発・研究を進めてきた有力IT企業はチャットボットを開発しやすくする仕組みである「チャットボットプラットフォーム」を発表しています。
「チャットボットプラットフォーム」の「プラットフォーム」とはソフトウェア開発の基盤部分で、それを利用すれば、開発を効率的に進めることができます。
Microsoftは2016年3月30日、開発者向けカンファレンス「Build 2016」で同社のパーソナルアシスタント「Cortana」の機能をチャットボットに搭載できる「Cortana Intelligence Suite」、チャットボットを開発しやすくするための「Microsoft Bot Framework」を発表しました。
LINEもチャットボット開発の提供を開始
LINEも2016年4月7日、LINE上で動作するチャットボットを開発できる「BOT API Trial Account」の提供を開始しました。
以下は、LINEの「BOT API Trial Account」を利用して開発された酒屋チャットボットの例です。
ユーザー:注文あるからちょっときてー
酒屋ボット:ちわー、三河屋です。
ユーザー:スーパー***の長いやつ24本、夕方5時までにもってきてー
酒屋ボット:ご注文は「アサ* スーパー*** 500ml 1缶×24本入り」ですね。2016年04月09日の17時までにお届けできます。よろしければ、「はい」と返答してください。
ユーザー:はい
酒屋ボット:ありがとうございます。シロネコ***便でお届けします。問い合わせ番号は「7986-3081-xxxx」です。またのご利用、お待ちしております。
これからのチャットボットプラットフォーム
そしてFacebookも2016年4月12日、開発者向けカンファレンス「F8」で「Facebook Messenger」上で動作するチャットボットを開発するためのプラットフォーム「bots for the Messenger Platform」を発表しました。
すでに、2016年3月30日には、KLMオランダ航空がFacebook Messengerアプリを使って搭乗券が受け取れるサービスを開始しています。LINEの三河屋チャットボットより複雑ですが、根本的には同じものです。
現在、世界中に急速に普及しているスマートフォンでは、次のようなメッセンジャーアプリを利用することが当然のことになっています。
- Google Hangouts
- LINE
- Facebook Messenger
- WeChat(微信)
- KakaoTalk(カカオトーク)
LINEやFacebookが提供を決めたメッセンジャーアプリ用のチャットボットプラットフォームは、今一番注目されており、今後、多様な機能を持つサービスに進化すると期待されています。